〇中間貯蔵施設計画(福島県)

   福島県大熊町・双葉町に計画されている中間貯蔵施設に関し、国が地上権設定補償の算定方法を歪めているとして「30年中間貯蔵施設地権者会」の門馬好春氏
  が東京簡易裁判所に調停を申し立てられました。以下に、環境省が「算定方法を歪めている」との門馬氏の主張を掲載した東京新聞記事を掲載します。
   東京新聞(2018.4.4)「算定方法を歪めている」
   本件に関し、門馬氏から意見書の提出を依頼されましたので、作成して4月13日に門馬氏にお渡ししました。
   意見書は後掲しますが、その要点を以下に記します。国(環境省)が如何に東電に有利な算定をしているか、東電を免責して、そのしわ寄せを福島の被災者に
  押し付けようとしているか、驚き呆れるばかりです。

 1.「土地の使用」にあたる中間貯蔵施設の補償に「空間・地下の使用に係る補償」の基準を適用
   中間貯蔵施設とは、「福島県内の除染に伴い発生した土壌や廃棄物等を最終処分までの間、安全に集中的に貯蔵する施設」と説明されており(環境省「中間貯蔵
  施設情報サイト」による)、受入・分別施設、土壌貯蔵施設、減容化(焼却)施設、及び廃棄物貯蔵施設等が設置されることとされていますから。「土地の使用」
  に当たり、「空間又は地下の使用」には当たりません。
   ところが、国は、「土地の使用に係る補償」の基準を適用せず、「空間又は地下の使用に係る補償」の基準を適用して補償額を算定しています。そのほうが補償
  額を抑えることができるからです。
   少し詳しく説明しますと、「土地の使用に係る補償」の基準に基づけば、地上権補償は、「現時点の土地価格」の6%の地代を30年間支払うことになります。と
  ころが国は、「空間又は地下の使用に係る補償」の基準をむりやりに適用して「現時点の土地価格」の70%を一括払いしようとしているのです。
 2.「現時点の土地価格」を「原発事故前の土地価格」の50%としている
   国は、「現時点の土地価格」を「原発事故前の土地価格」の50%としていますが、それは原発事故等格差修正率50%を乗じたからです。
   しかし、原発事故等格差修正率を乗じて減価される最大の責任は東電にあるはずです。東電は原子力損害賠償法に基づき原発事故に伴う損害に対して損害賠償責任
  を負うからです。
   ところが、本件においては、地上権補償においても売買においても「現時点の土地価格」に原発事故等格差修正率50%を乗じた値が採用されています。これは、
  東電の責任を免責し、そのしわ寄せを福島第一原発事故に何の責任もない地権者に押し付けている措置にほかなりません。原賠法に基づけば、「現時点の土地価格」
  には、地上権設定においても売買においても「原発事故前の土地価格」100%(負担は国と東電で折半)が採用されなければなりません。
 3.「30年後の返還時の土地価格」を「原発事故前の土地価格」100%としている
   「30年後の返還時の土地価格」が「原発事故前の土地価格」の100%とされていることも不可解です。
   福島第一原発事故に伴う放射能汚染の主成分はセシウム137であり、その半減期は約30年です。国は、「30年後に土地を原状回復して地権者に返還する」として
  いますが、「原状回復」には「物件(施設)の除却」しか含まれておらず、放射能汚染のことは全く考慮されていません。
   したがって、「30年後の返還時の土地価格」が「原発事故前の土地価格」100%に戻るはずはなく、仮に70%になったとすると(100-70)=30%は東電が返還時に
  負担しなければならないはずです。

  4月19日の第1回調停では門馬さんから口頭趣旨説明書(準備書面1)及び熊本意見書の概要を説明されましたが、調停委員の感触はとてもよかったとのことでした。
 ・6月7日、Bloomberg BMAというロンドンに本拠を置く法律・経済・政治・環境に関する専門誌から除染土の農地利用についてのインタヴューを受けました。その際、
  「30年中間貯蔵施設地権者会」の門馬好春氏の取組みについて話したところ、門馬氏の紹介を依頼され、6月14日、門馬氏もインタヴューを受けられました。日本政
  府は欧米からの外圧に弱いので、英文での情報発信は有意義なことだと思います。
 ・6月21日の第2回調停は午後1時半から4時半まで3時間の長丁場でしたが、結論として「調停は不調で終了」となりました。理由は、「国は地権者に既に十分説明した
  ので調停で改めて説明することも方針を変えることもないとしているので、調停不調とする」というものでした。門馬氏によれば、裁判官と二名の調停委員は、
  逃げ腰で、やる気が全く見られなかったとのことです。調停委員A氏は「申し立て内容をよく理解していないかも知れない。裁判して!」と言い、調停委員B氏は「こ
  のような調停は経験がない」と言ったそうです。門馬氏も同席されていた門馬氏と同席されていた越前谷弁護士も呆れ果てたそうです。
  要するに、簡易裁判所での調停で国相手にまともな対応を求めるのが無理だったということでしょう。モリカケで露わになっているこの国の司法の崩壊ぶりが改めて
  確認できたとも言えます。
  しかし、門馬氏も越前谷弁護士もますますファイトを燃やされていますので、今後の新たな闘いに期待しましょう。
 ・6月29日、いわき市役所記者クラブにおいて、30年中間貯蔵施設地権者の会の記者会見を開きました。
  記者会見では、門馬好春会長及び越前谷弁護士が調停の経緯及び今後の方針(環境省との直接交渉を柱とする旨の方針)を説明されました。
  今後、交渉を通じて、環境省の主張の問題点・矛盾点を明らかにしていくことになりますが、特に、同省の「地代の支払額の累計が土地価格を超えることができない」
  との主張の誤りを明らかにすることがポイントとなります。その主張が誤っていることは、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」第20条の2、及び同条項につい
  ての『公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱の解説』における解説から明らかです(資料「熊本意見書」を参照)。また「地代の支払額の累計が土地価格を超える事
  例がいくつもある(むしろそのほうが普通である)ことからも明らかです。今後、それが誤りであることの認識・理解を地権者の間にもマスコミにも広げ、共有してい
  く必要があります。
   記者会見で私が配布した資料を次に掲げます。
   2018.6.29記者会見熊本レジュメ
 ・地権者会と環境省の交渉について分かり易くまとめられている月刊FACTAの記事を次に紹介します。
   月刊FACTA2018年9月号記事
 [資料]
   門馬好春氏口頭趣旨説明書(2018.4.19準備書面1)
   熊本意見書(2018.4.13)
   地権者会平成30年度会報第9号
   第2回地権者会説明会の事前質問への環境省回答
   英文誌Bloombergの記事
   地権者会平成30年度会報第10号