〇辺野古基地埋立問題(沖縄県)

  国が米軍普天間基地の移設を目的として沖縄県名護市東海岸の辺野古地区の地先海面を埋め立て、辺野古基地を建設しようとしている問題です。

 1.辺野古基地建設に関し、次の①~③を主張しています(詳しくは拙著『漁業権とはなにか』参照)。
  ①漁協が総会決議で「共同漁業権の一部放棄」決議を挙げても、それによって共同漁業権が変更されるものではない。
    これは水産庁が数十年にわたって通達等で示してきた見解ですが、佐藤一雄前水産庁長官が首相官邸から圧力をかけられ、見解を変更する文書を出しました。
    加計学園事件での前川喜平前文科省事務次官への圧力と同様、佐藤前水産庁長官への圧力も首相官邸の和泉洋人首相補佐官が行なったようです(佐藤氏の場合
   は首相も同席)。
    今後の埋立全般に係ることからすれば、加計学園事件よりも大きな禍根を将来に残すものです。早急な是正が必要です。
  ②立入禁止海域での埋立は違法
    埋立の手続きを定めた公有水面埋立法は、公共用水面(海や川など一般公衆の共同使用に供されるもの)にしか適用できません(第1条に明記されています)。
    ところが、国・米軍は、辺野古埋立海域を立入禁止海域に指定しました。立入禁止により公共用水面でなくなった海域においては公有水面埋立法に基づく手続
   きはできません。ですから、埋立承認もその法的根拠を失っており、国の進める辺野古埋立工事は違法工事です。
  ③名護市東海岸沿岸の漁民・住民は名護市東海域に入会漁業権を持つ
    共同漁業権は、入会漁業権に由来する権利です。漁村部落の持つ入会漁業権を背景として、漁村部落の入会集団に共同漁業権を免許しているのです。
    沖縄県では、明治時代に漁業法に基づいて専用漁業権(共同漁業権の前身)を入会集団の創った漁業組合に免許していましたが、東海域の東村から金武町
   までは免許がなされませんでした。しかし、免許がなされなくても入会漁業権はなくならず、慣習に基づいて存続します。復帰後、東村の漁民は国頭漁協に
   属しました。宜野座村、金武町の漁民は、それぞれ漁協を創って共同漁業権の免許を受けました。ところが、名護市東海域に設定された沖縄第5号共同漁業権
   は、戦前から西海岸に創られていた名護漁協に免許されてしまったのです。
   名護漁協の組合員約120名のうち約100名は西海域で漁業を営んでおり、辺野古埋立による漁業被害は受けません。東海岸に住む組合員は20名程度しかいません。
   ところが、辺野古埋立に伴う補償金は名護漁協に支払われ、東海岸組合員には一人当たり約3千万円、西海岸の組合員には一人当たり約2千万円が配分されたと
  言われています。沖縄第5号共同漁業権は、名護市東海域に入会漁業権を持つ入会集団の創る漁協に免許されるべき共同漁業権です。それを無視して、西海岸の
  名護漁協に免許されていること、そして名護漁協の総会決議に基づいて国が埋立を進めていることが、名護市東海岸住民・漁民の持つ入会漁業権を違法に侵害し
  ているのです。
   2に述べる名護市東海岸漁協設立の取組みは、この状況を改め、名護市東海域を入会集団の手に取り戻そうとする取り組みです。
   以上のことは、漁業法をかなり勉強しないと理解できません。詳しくは拙著『漁業権とはなにか』を参照していただきたいですが、理解の助けになる図を次に
  掲げておきます。
   沖縄 共同漁業権 リスト・地図

 2.名護市東海岸漁協設立の取組み
   名護市東海岸沿岸の漁民・住民は、1③の入会漁業権を明確にするべく、名護市東海岸漁協の設立に取り組んでいます。
   2017年11月24日に創立総会を開き県に認可申請したのですが、書類上のミスなどのため、認可をより確実にするべく、いったん認可申請を取り下げ、再申請を
  することにしました。
   名護住民35人が「東海岸漁協」設立 顧問に稲嶺前市長 沖縄県に認可申請へ
   稲嶺進前名護市長も顧問に就任してくださいました。
   名護市東海岸漁協の設立・認可に向け、カンパも要請中です(次のファイルの記事及び要請文を参照)。皆様の応援を宜しくお願いいたします。
   稲嶺氏顧問就任及び名護市東海岸漁協へのカンパ要請文
   追記:おかげさまで認可申請に向けたカンパは目標額を達成したため、カンパ要請は一時停止中です。認可後にカンパ要請を大々的に再開します。

   2018年3月24日に設立準備会開催、4月20日に創立総会を経て、5月9日に県に関係書類(定款や議事録等)を提出し、認可申請をしました。認可についての
  知事の判断は申請後2カ月以内に出されることになっていますので、知事判断は7月8日までになります(知事が報告書提出の要求を発したときは、その日から
  その報告書が知事に到達するまでの期間は延期されます)。
   名護東海岸漁協 認可求め再申請
   認可を心待ちにしている方々からしばしば問い合わせを受けるため、以下、認可に関する法律を説明しておきます。
   協同組合は、本来、設立自由(「設立自由」は協同組合原則の一つ)の団体です。水産業協同組合法でも「法律の定める要件を備えれば、必ず認可がなされ、
  組合が設立される」とされています。「法律の定める要件を備えれば必ず認可がなされること」を認可主義と言います。協同組合の設立は認可主義に拠るのです。
   「法律の定める要件」に関し、水産業協同組合法第64条には次の①、②のいずれかに該当する場合を除き、設立の認可をしなければならない、と規定されて
  います。
   ①設立の手続き又は定款若しくは事業計画の内容が、法令又は法令に基づいてする行政庁の処分に違反するとき
   ②事業を行うために必要な経営的基礎を欠く等その事業の目的を達成することが著しく困難であると認められるとき
   名護市東海岸漁協の認可申請に関しては、①については全く問題ありませんので不認可とする理由は②しかあり得ませんが、②についても過去の認可事例を
  十分に踏まえて申請していますし、水産庁協同組合課編『水産業協同組合法の解説』には「組合が真に経営的基礎を欠いているか否かは現実に組合が設立され、
  事業活動を行なった後でなければ明確に判断できないのは当然であ」るとされていますから、よほどの政治的判断が入らない限り、不認可とされることはあり
  得ません。
  ・2018年7月9日に沖縄県から不認可理由書が届きました。
   不認可理由書
   法的理由としては、現在の組合員には法人組合員(個人の漁民でなく法人の組合員)が居ないので、定款の組合員資格に法人組合員を入れませんでしたが、将来
  法人組合員が加入を希望する可能性もあるので、加えておくべき、との指摘です。認可後に定款変更の手続きをとれば済む程度とも思いますが、瑕疵であったこと
  には違いありません。
   不認可とされたのは残念ではありますが、法人組合員の点を含め、不認可理由の1,2,4は修正を加えれば対応可能です。問題は3ですが、これに関しては、沖縄県
  が水産業協同組合法の解釈を誤っていると思われます。早速、理由3への反論をまとめて送ったところ、7月12日の県からの不認可に関する説明を聞く機会に県に提出
  されました。
   反論書は、次の通りです。よく読めば、反論が正しいことを理解していただけると思います。
   不認可理由3への反論書
   今後、反論書への県の回答等を踏まえて再申請するか否かを判断することになりますが、入会漁業権を確認し、大浦湾を地元住民・漁民の手に取り戻そうとする
  熱意はとても強いので、再申請することになると思われます。ご期待下さい。
  ・再申請への取組みが始まりました。7月20日から目論見書の公告を開始しました。2週間の公告を経て8月3日に設立準備会を開催します。
  ・8月3日、設立準備会を開催、順調に議事を終えました。
   また、県からも、不認可理由書の水産業協同組合法の解釈を間違っていると思われる部分について詳しい説明書が送られてきて、違法性の疑念(私見との違い)は
  解消しました。
  ・8月22日、創立総会を開催、順調に議事を終えました。近日中に認可申請することになります。
  ・8月27日、名護市東海岸漁協の認可申請を行ないました。
◇11月8日(木)
  お待たせしました。久々の更新です。
  認可申請についての沖縄県の判断は、11月15日か16日になるとのことです。
  水協法では、原則的には「認可か否かの判断は認可申請後2カ月」とされていますが、県が申請者に質問した場合には、質問から回答が得られまでの間は、その分
 延期されるともされています。
  申請が8月27日でしたから、原則的には10月26日までですが、認可要件の「定款と事業計画」のうち、定款には全く問題ないものの、事業計画に関して質問があっ
 ため、10月26日よりも延びているのです。
  質問はいくつかあったようですが、最後の一問への回答を今日、11月8日にするとのことです。
  定款は少しでも欠陥があれば、それを根拠に不認可になりますが、事業計画は「事業目的を達成することが著しく困難と認められるとき」でなければ不認可にできな
 いし、水協法の解説書には「著しく困難かどうかは、組合が設立され、実際に事業活動をやってみなければわからない」と説明してあるし、県からの質問―回答の経緯は
 は、「約10項目の質問→回答→1項目の再質問→回答(11月8日)」ですから、どう考えても判断は決まっています。
  県は、「15、16日頃判断を出します」と言っているそうです。
  11月15日(木)又は16日(金)、名護市東海岸漁協は認可されます。

◇11月18日(日)
  8日に「認可されます」と書いておきながら、申し訳ありませんが、16日、不認可の判断が出ました。
  理由書は、次の通りです。
   不認可理由書
  要するに、①漁業経験者が少なすぎる、②事業計画に比し、施設が貧弱すぎる、の二点です。この理由書を見て、呆れ果てるとともに、猛烈に怒りが湧いてきました。
 なぜなら、こんな理由なら、再申請の当初からわかっていたことで、判断は1日でできたはず。何故、2カ月+20日余りもかかったのか、理由は明らか。辺野古埋立を進
 めるため以外に考えられません。
  ①にしても、新しい漁協創設の際に漁業経験者が少ないのは当たり前のことなので、「90日以上漁業を営む意思」が漁船や漁具等をそろえることで客観的に示されれ
 ばよいということになっており、県も同様の意向だったので、他の漁協と比べて遜色ない程度までそろえたのです。その努力を全く無視して①の理由を提示するとは白
 々しいにもほどがあります。ましてや、例の違法看板で、海に入ったら逮捕もあり得るとの脅しを6年前からかけ続け、住民・漁民が海には入れない状況を県がつくって
 いたのですから、その責任を棚に上げて①を示すとは、およそ人間としての礼儀を欠いた、ひどい仕業です。
  そもそも、沖縄県水産部は、初めから「申請をあきらめろ」と言わんばかりの対応でした。新しく漁協を創ろうという取組みに水産振興を担当している県の役人として
 示してはならない態度です。その態度が、ずっと最後まで一貫していたということです。最初から最後まで「結論ありき」だったのです。
  水産部のこの姿勢は、翁長知事及び玉城知事の意向と反するはずです。しかし、今回、私の経験でも初めて分かったのですが、知事の意向と事務方の意向は必ずしも一
 致しているとは限らないのです。鳩山政権の時、官僚の抵抗で鳩山政治が実現しなかったことと同じです。県政を変えるには、首長を変えるだけではダメで、県の役人と
 闘う必要があるということです。
  今回の沖縄県水産部は、最初から最後まで、国(官邸や防衛省)のほうを向いていました。水産部は、元々、長年自民党に付いていたそうですが、今回はさらに官邸(特
 に和泉洋人)や自民党議員からかなり強烈な圧力があったのでしょう。
  他方で、知事から委任されて本件を担当していた方や、知事の意向と事務方との間の調整役を担当していた方は、あまりにも役割を果たせなかったというほかありませ
 ん。それどころか、官邸の圧力がそこにまで及んでいた可能性も考えられないわけではありません。

  しかし、沖縄県水産部の皆さん。これで「してやったり」と安心してちゃいけませんよ。これしきであきらめる私ではありませんし、地元の皆さんもそのようですよ。
  あなたたちの傲慢な姿勢をこれから暴いていくとともに、あなたたちを論争の場に引きずり出していきますよ。
  こうなったら、私の得意のパターン。一気に戦闘モード突入です。いままでの協調路線では打てなかった手がどんどん打てるようになります。築地市場で東京都に対し
 て次々に打って都を完全に論破してきたように。
  もうこれから、県の判断を仰ぐ必要がないばかりか、県が一切干渉できないし、県を攻めていけばよいと思うとスカッとしました。
  皆さん、大浦湾における「入会漁業の復活・再生」の取組みは、これからがようやく本番です。しかも、12月中には、ほぼ目処が立つでしょう。
  お楽しみに。ご期待ください。
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